「仕事が好きすぎて困っちゃうんです」とニヤリ。
そして、「うぇ~い」と場を盛り上げるのが大好きな小林さん。実は、他県からも注目される“楽しい福祉研修”を作り上げる中心人物なのだとか。
なぜそんなに仕事が楽しいのか、なぜそんなに頑張るのか、お話を聞いてみました。

―お仕事は何をしていますか?

基本的にはコネクターって役職をやってます。
人と人を繋ぐ人という意味合いです。
水戸にある社会福祉法人で、福祉専門学校の教員と、特別養護老人ホームの施設長の補佐社内向けの研修責任者、あとは地域の福祉事業所同士をゆるく繋ぐ「ちいともネット内原」で会議を楽しく進行する係とかをやってます。どれも力を入れてやっていきたいと思うんですけど、いま軸足を置いてるのは「いばふく」(※)かなと。福祉業界の人材育成と定着を目的に茨城県の事業をきっかけにはじまったプロジェクトで、この4年で40本の楽しい研修を作ってきました。

※いばふく・・・茨城を福祉で元気にするプロジェクト

―どんな研修を作っているんですか?

一言で言うと楽しい研修です。福祉の仕事では「この人こういうことを思っているんじゃないか」っていう想像力と洞察力がめちゃくちゃ大事だなと思うんですよね。
「認知症の対処方法は」とかの
技術や知識を伝える研修をする団体はあるので、僕たちはその技術をのっける土台作りをしたいと考えてます。例えばボイストレーナーを講師に呼んでコミュニケーションのことを声から考え直すとか、ひとりひとりが仕事を楽しめるように課題解決の方法をみんなで出し合うとか。仕事の「モチベーション」を上げた上で「スキル」も 上がり「プレゼンテーション」もできるようになるという、3つの柱でやってます。

―だれでも参加できるんですか?

エブリバディOKです!
対象が決まっている研修もありますが、いま茨城各地でやっている「超作戦会議」は、福祉に興味がある人みんなでアイディア出しをするワークショップです。

―研修作りで一番大切にしていることは何でしょうか

「楽しいは記憶に残る」っていうのを絶対外さないテーマにしてるんです。
研修の参加者に「ああ楽しかった」って言ってもらって学びを残す。内容を作る時もつまらないと思ったら「これちょっと違うね」っていう風に話し合います。楽しむことで業界にライトに入ってもらいたい。だから僕は圧倒的に人気者になりたいんです。
僕をキャラクターにした「コバコネちゃん」のシールを配ったり、黄色いチョッキを着てみたり、とにかく賑やかして覚えてもらう。「なんかコバコネちゃんがやってる研修楽しそうだから行こうかな」みたいな。あとは「うぇい」ですね。

―…すみません、「うぇい」って何ですか

言ったら「コール&レスポンス」ですね。「うぇい?」って言ったら「うぇ~い」って返って来るみたいな。
研修でそれをやると最初はシーンとなってるんですが、最後はみんな「うぇい!」って言ってくれてすごい嬉しいです。楽しい研修と思ってもらえたバロメーターのような感じです。でも仲間から「鋼のメンタルだね」って言われるんですけど、続けることに意味があるかなと思ってて。

―何のためにそんなに頑張るんですか?

「いばふく」のコンセプトって「茨城を福祉で元気にする」なんです。
いわゆるカテゴリー分けでは福祉業界って介護とか医療とかだと思うんですけど、その人達が社会で
活躍できる人材になったら茨城が元気になるんじゃないかっていう仮説のもとでやってまして。
「いばふく」って割と挑戦できる環境で、面白いことを輸入してきて
独自の研修をたくさん実現できるんです。しかもそれを専門学校の授業とか他の仕事にも活かせる。なかなかオギャーと生まれない時はキツいですけど、それはそれで最終的に終わった後の「うぇい感」が半端ない。
さらに上司が「
自由にやっていい」って許してくれるのがすごく大きいです。あと活動を続けていくうちに事業所や業種の垣根を超えてたくさんの仲間ができました。それはすごい財産です。

―学生の頃からこういうことをしたかったんですか?

いえ、実は高校2年生の時に写真に目覚めまして、写真家を目指していました。写真家の森山大道さんや牛腸茂雄さんの作品がすごい好きで、僕もポートレートを撮って表現をしたくなった。
で、大学で写真を勉強して出版社のカメラアシスタントとして雇われたんですが、そこですごい挫折をしました。仕事が圧倒的に出来ない自分に気づいた。大好きな祖母がその頃入院していて死んじゃうかもしれないという時だったので、一回茨城に帰っておくか、って逃げてきました。

―「表現」がしたかったんですね

が歌を歌っていたし、食っていけなくても表現をし続けてる友達もいて、置いていかれるのが嫌でした。だから茨城に戻ってから、ニートしながら今度は芸大を目指したんですが落ちて、次また表現したくなるまでの繋ぎとして高齢者福祉施設で働き始めました。施設ではたくさんの人の死を経験して、それを経験した人としていない人の差って何があるかなとか、そういうことを写真で表現してみようとか思っていたんですが、実際の介護の仕事って面白くて、結局表現せずに終わっちゃったんですけど。

―介護の仕事はどう面白かったのですか?

生き死にのお付き合いができるっていうのは、相当心が揺れるんです。生きるっていう事を見ていると、いつも感動があって、僕には魅力的でした。いい経験も、悪い経験も。

―介護の仕事はお給料が安いっていう印象があります

あれはカラクリがあって、要は普通にキャリアを積んでいけばまあまあ給料貰えるはずなのに途中で辞めちゃうんですよね。だから給料が安いように見える。
で、辞める理由はというと、大体が人間関係なんです。だから僕たちはコミュニケーションとか自身の課題解決とか、チームビルディングのような研修も結構やります。いま茨城のあちこちでやっている「超作戦会議」っていう研修、仲間づくり、人間関係作りもできたらいいなと。
「いばふく」は、福祉職の人材定着にそういう役割をしているかなって思っています。

―経験者として、介護職をどう勧めますか?

僕は「すげえ魅力的な業界だよ」と売り出すつもりは正直なくて。世の中のネガティブなイメージとは違って「いや、普通の仕事です」って言いたいわけです。
「どうせ3Kでしょ」って思われてそこで止まっちゃうんですよね。でも別に普通の仕事なんですよ。むしろ、これからの社会で活躍する可能性はめちゃめちゃあって。だからこそ、興味を持ってもらいたい、知ってもらいたいって思ってます。

―可能性があるんです

働き方という文脈で考えると介護の仕事って、どこでも仕事できるんですよね。例えば自分探しをするために離島に行って、お仕事は介護職。そういうのが可能なんです。これからの超高齢者社会を考えると、サービス業としての可能性もめちゃくちゃ高いです。高齢者のお客さんを対応する為に、介護のスキルが役立つとか。街づくりの文脈でも超高齢社会だからこそ福祉職こそこれから絶対活躍していくと思ってます。

―茨城の福祉業界って元気なんですか?

めっちゃ元気だと思います。湧いてます。都内の福祉関係の人も「こんなに元気にやっているところないよ」って言ってくれます。これからUターンやIターン就職をする人にも、こういう魅力的な教育、魅力的なコミュニティがある「いばふく」があることを頼ってもらえると嬉しいですね。

―改めまして、仕事はお好きですか?

好きなんですよねぇ。好きで困っちゃうんですよね。
写真で表現をしている時のようなワクワク感と似てて。
例えば誰を講師に選ぶかっていうのもそうですし、何を訴えるかっていうコンセプトがすごい大事かなと思ってて。
「このテーマでやってください」って講師に丸投げするんじゃなくて、事前にめちゃくちゃ打ち合わせをして、「これだね」っていうのが見つかるまですごいしゃべります。
「何をもってこれをやっているんだ」っていうところが腹落ちして研修ができた時って、すげえ気持ちがいいんですよね。

―お子さんが将来「仕事したくない」と言い出したらどうします?

急に難しい質問ですね。
でもやっぱり「人と出会えるのはすごい宝だぞ」って言いますね。
ほんとこの仕事してて、すっごい人と会ってるんですよ。今日もこうやって取材の皆さんに会えてるし。
仕事ってめっちゃ人と会えて楽しいぞと。人と会うとすげえ成長するぞって本当に思いますよね。景色変わるよって。
だから「仕事して人に会ったら?」って言うかな。

Writer Profile

栗林 弥生

1982年水戸生まれ、Uターン型ライター。報道カメラマンの父に憧れ、東京の番組制作会社でドキュメンタリーなどの番組を制作。現在は水戸で子育てと仕事の両方を楽しむ。人柄に触れるしみじみとした話を聞き、書くことが大好物。

Photo:鈴木 潤