「人を巻き込んじゃうんですよね。じっとしているのは性に合わない」
笑顔でそう話すのは、株式会社Cepon代表、鷲田るみさん(16)。
中学生で起業し、現役高校生にして、社長。
起業という選択と、学校生活との両立について伺いました。

—株式会社Ceponの事業内容は?

日本の魅力を世界に発信するというコンセプトのもと、活動しています。
商品開発や情報発信、イベントの企画という三本柱があります。
来年に関しては、商品を作りたいというのがあります。
日本の四季の音が鳴るお土産をつくりたいなと。
東京オリンピックに来る外国人の方たちを相手に、事業を展開したいんです。

—女子高生をやりながらさらりと起業、自然体な感じですよね。

JK(女子高生)、楽しいです!
本当はだめなんですけど、授業とか、たまに寝ちゃったりします(笑)

—周りは大人ばかりだと思うんですけど、起業するのに度胸は必要でしたか?

実は、最初はぜんぜん大人としゃべれなかったんですよ。
なんで自分はここにいるんだろうって思う場面もあったんです。
でも、「がんばれ、自分!」って感じで。

—大人が助けてくれることはありますか?

本当に本当に、本当に、助けられていますね。
ある人に「こういうことがやりたいんです」って言ったら、別の人に伝わって
また、新しい人との繋がりができることもあって。
これまでに、いろんな人が持ち上げてくれました。

—身近な大人でいうと、ご家族も起業を後押ししてくれました?

はい、母自身が起業していることもあり、すごく応援してくれました。
父と母は「るみの好きなことをやっていけばいいよ」って言ってくれています。
けっこう自由にさせてくれるので、それも含めて、助けてもらっています。

—全面バックアップは心強いですね。

実は、人前に出るときに、すごく緊張するタイプでした。
でも「自分が自分のことを一番好きって言える人になる」っていう母の教えがあるんです。
だから、自己肯定感を高く、自信を持つようにしています。「なにこれ私、天才じゃん、最高じゃん」っていうように。
気分がどん底に沈んだときでも、母の言葉が支えになっています。

—ご両親の影響は大きいですか?

そうですね。
小さいころに、旅行に連れて行ってもらえる機会が多かったことも刺激になりました。
海外に行くと、「外国、大好き!」ってなるんです。
でも帰ってきたら、やっぱり、なんか日本っていいなと思う。
それを繰り返すうちに、だんだんと日本を好きになっていきました。

—外の世界を知ることで、日本の中のことが見えてきた?

日本の魅力に気がつきました。
人がすごく優しくて、店員さんにしても、一つ一つの対応が丁寧だし。
おもてなし精神というか。
日本の雰囲気がすごくいいなあって思って。
なんだか、おだやかな感じがしませんか?

—それを小学生にして感じとったんですね。

世界中に日本を大好きな人を増やしたいっていう夢と、起業家になりたいっていう夢を、並行して持っていました。
初めて起業家という道を考えたのは小学3年生のときです。
近所にお気に入りのモンゴルのアンテナショップがあったんです。
ある日私急に思い立って新メニューの提案をしたんです。それをきっかけに社長さんと仲良くなりました。
それで「ジュニアスタッフ」という形で、色々な経験をさせていただいて。
そのときに、起業したら、自分の好きなことをやれるんじゃないかなって思いました。

—周りの友達に話していましたか?

おそらく、小学校の時はぜんぜん話していなかったです。
夢について話す機会って、無かったかもしれないですね。
でも中学上がってからは次第に話すようになって、中3の時には私の学校特有のイベントである「夢を語る会」で全校生徒に向けてお話しさせていただいたりもしました。

—夢を実現して起業したきっかけは、中学校にありますか?

中学校の担任の先生に私の2つの夢についてお話ししていたんですけど、
そうしたら2年生のときに外部のイベントをおすすめしてくれたんです。
企業から出されたテーマに対して、新しいアイデアをプレゼンするというイベントでした。
全国の中高生が集まって、年齢も性別も関係なく、チームを組んで考える。
楽しみながらアイデアを出して自由に発想することができる場でした。
その空間が楽しくて仕方がなくて(笑)。
参加以前は、1歳ちがうだけで人としゃべりづらいことがあって。
でも、そこで年齢とかあんまり関係ないなっていうのを感じました。

—イベントに集まった中で、起業したメンバーもいますか?

たぶん、いたかな。
そういうイベントって、色々やっている人が集まってくるんですよ。
もう、衝撃で。
「中学生で、高校生で、そんなことできちゃうんだ!」みたいな。
べつに“今”、起業しても悪いわけじゃないんだなって思って。
ほんとうに、価値観が変わった。
人生の転機っていうぐらい、重要だったと思います。

—1度社会の様子を見てから起業するものだと思いがちですよね?

私も、ただ漠然と起業したいって言っていたときは、イメージがずっと先のことだったんです。
大学を出て有名企業で働いて人脈つくって、そのあとに、起業、みたいな。
でも、イベントに行ってみたら、同世代の人たちに「そんなことないんだよ」って言われて。
「そっか、やっちゃえばいいんだ!」って、起業ってそれこそ年齢なんて関係ないんだと思いました。

—それで背中を押されて?

「もう、せっかくなら起業しちゃいたい!」ってなったんですよ(笑)。

—実際に起業するまでは、どういう流れだったんですか?

未成年だといろんな提出書類があって、時間かかっちゃって。
中学2年生の9月に個人事業主の届け出をして、10月につくばの起業家の交流イベントに参加したんです。
そこで投資してくださる方にプレゼンしたときに、「面白いし、せっかくなら中学で起業しちゃえば?」って言われて。
事業自体はもうボロボロだったんですけど。
中学3年生の3月に株式会社にしました。
学校に相談した時、最初はすんなりいかなくて。先生方の間でちょっとした問題になってしまっていました(笑)。
でも最終的に認めていただけて、今も先生方が気にかけてくださっています。

—前例がなかったからですか?

私の学校はアルバイト禁止なので、起業はアルバイトなのか、と。
でも夢を叶えるための活動だから、と報告義務付きでOKをいただきました(笑)。

—周りと流行りは合いますか?

流行り?なんでしょう、タピオカ?
タピオカ大好きですよ、私。

—女子高生っぽいワードが、やっと出てきた(笑)。部活はしていますか?

中等部の時は3年間テニス部に入っていました。
調理同好会には中等部から4年間、ずっと所属しています。
とても楽しいんです!同好会なので月1くらいの頻度ですが(笑)

—鷲田さんと同じように、学校外でも活躍している生徒はいますか?

ちょこちょこ、います。
私の話は知ってくれている子も多くて、けっこう将来についての話もしますね。
男子のなかには「社長、社長」とか言って、少しふざけてくる人もいるんですけど。(笑)
「学校に社長がいるらしい」という噂が広まっているらしいです(笑)。

—今のところ、会社は順調ですか?

ぜんぜん順調じゃないです。
やばいです、本当に(笑)
自分の甘さを痛感しています。
このまま会社を続けたいなら、ちゃんと自分で学ばないといけないと思っています。

—大学受験は目指していますか?

東大に行きたいと思っています!
私アイデアを考えるのが好きで。でも、実際に作るのが苦手なんです。

アイデアを出すのは得意だけど実現するまでの色々が?

そうです。
自分でも改善したいなと思っていて。
今私はただ突っ走っているだけのようなものなので、1回ちゃんと経営学を大学で学びたいと思っています。
今は東大の経済学部経営学科に行きたいと思っています。

—東大志望、圧倒されてしまいました(笑)。起業が単なるステップアップの一つにしか見えないですよね。

私には大きな夢があるんです!

—お、何でしょう?

2030年って明言しているんですけど、楽しみながら日本文化を学べる「JAPON LAND」というテーマパークを作りたいと思っています。

—どの辺りに作るんですか?

今のところ、茨城空港の近くです。
地域活性化もですが、お世話になっている方々に来ていただきやすいかなと思っていて。
修学旅行の聖地とかになればいいなと思っています。

—夢を見つけられないという人も多いけど。

自分の芯とか、夢を見つけられたら、すごく強いなと思います。
友だちから「将来、何したらいいかわからない」って相談を受けるんですよ。
でも、夢が決まっていないってこれから先見つけられるってことじゃないですか?それって今だからできることだと思うんです。いろんな人から話をきいたり色々なことに突撃してみれば何か見えてくると思います。

—やっぱり夢を見つけるまでが、みんな悩んじゃう?

そうですね。
人との出会い1つで価値観が変わることもあります。
他の人と話して、自分のやりたいことを知ることができたり、もっと深められたりすると思う。
何でもかんでも、面白そうだと思ったら参加するとそれが繋がったりもします。

—将来、自分はどんな人間になっていると思いますか?

正直、ぜんぜん自分の将来像が見えないんですよ。
でもとりあえず今は、ずっと起業家を続けていきたい。
実際にこれからどんなことがあるかわからないので、自分自身、楽しみです。
「世界中に日本が好きな人を増やしたい」って目標があるけれど、手段は起業の他にも、色々あるから。
未来では何やってるんだろうなって、自分のことながら楽しみです。

—枠に囚われない視点で、可能性がどんどん膨らむ気がしますね。

ずっと、あれこれやっていたいです。
多分じっとしているだけだと性に合わないんです。
色々やって自分の殻を突き破っていきたいと思っています。

—自分だから起業できたと思います?それとも実は、誰でもできるのでしょうか?

個人事業主になるのは、けっこうリスクが低いんですよ。書類申請のためのお金ぐらいで。それぐらいだったら、なんとかやれちゃうと思うんですよね。

周りの環境が原因で、新しい道を知らずに終わっちゃうのは、すごくもったいないと思うんです。
それぞれにそれぞれの可能性があるはずなんです。
自分から他の人に伝えてあげたり、教えてもらったり。そういう連鎖が自然とできていったらいいなと思っています。
私が偉そうに言えることじゃないのですが(笑)
弾けましょう!

Text:齋藤明美 Photo:鈴木