働き方改革やオリンピック対策として注目される「テレワーク」。
茨城と東京の距離感ってテレワークするのに相性良いだろうな、
そう思っていたところ、小美玉市に住む保田さんにお話を聞けることに。
保田さんはテレワークによってどんな働き方、暮らし方に変わったのでしょうか。

―今日はありがとうございます。
まずはどんな経緯でテレワークに至ったんですか?

自分は小美玉出身で、大学から東京に出ました。特許事務所に長く勤めていたんですが、仕事の幅を広げたくて今の株式会社ゼンリンデータコムに転職しました。その頃に2人目の子どもができたので、地元で親に育児を助けてもらえるように小美玉から通いたいと思っていたところ、会社が快くOKをくれて、地元に戻ってきました。

ただ小美玉からだと品川までの通勤が往復5時間で、子どもが起きる前に家を出て、帰ってきても子どもは寝ている状態で。大好きな子どもと会話ができないのはちょっと寂しかったんです。電車の状況次第では立つこともあり、体力を消耗していました。そんなとき、会社がテレワークを導入することになり、それによって今までの問題が解決できました。

―保田さんの場合、どんな風にテレワークしているんですか?

週に2回、小美玉の自宅で仕事をしています。1日の就業時間は、会社にいる時と同じ7時間半です。仕事場はリビング横のスペースで、朝、子どもが起きてにぎやかになったら2階に移動。日中は妻もパートに出て家に誰もいなくなるので、ひとり黙々と仕事をしている形です。仕事内容は知的財産に関する業務で、パソコン1台で会社にいる時と同じように仕事ができています。

―勤怠管理とか、会社とのやりとりはどうしてるんですか?

業務内容を事前に上司にメールで送り、始業時や昼休憩もその都度メールして、1日の終わりには作業報告を送ります。会議がある日は基本的に出社するようにしていますが、在宅の時に打ち合わせの必要があれば、「Teams」というチャットソフトを使います。上司もテレワークを使っているので、お互い家にいれば会議室にわざわざ行かなくても大事な話ができて便利です。テレワークを始めるために特別なソフトや仕事環境を用意しなくても最初からスムーズに仕事ができていて、自分の職種はテレワークに向いてるなと思います。

―何かデメリットってありますか?

自分の中ではデメリットってないんですよね(笑)。
テレワークをしているぶん、成果を出したいという気持ちがあるので業務の振り分けが計画的にできるし、進捗管理もきちんとできるようになりました。あと通勤の疲れもないので、誰もいない家で黙々と集中できるし、すごく効率化ができているんです。いま42歳なんですけど、これからどんどん歳をとっても通勤の負荷を心配しなくていいのは嬉しいですね。

デメリットを強いて言うなら、ちょっとしたことを聞きたいときにメールを書くとか、「いまチャットで話しかけて大丈夫かな」と考えるとか、チャットではペンで図などを描きながら説明がしにくいとか、そういうちょっとしたコミュニケーションのことですかね。

―ご自分の時間に変化はありましたか?

テレワークができたことで、通勤の5時間分を夕方自分の時間として充てられるようになりました。その結果、家族と一緒に過ごせる時間が増えたことが一番大きい変化です。子どもと一緒にご飯を食べたりお風呂に入ったり、そういうちょっとしたことなんですけどすごく嬉しいです。

あと、平日夕方から地元のイベントに参加できるようになりました。今までも地元に関わりたくて茨城空港でのボランティアに参加してたんですが、やはり平日にはなかなか参加できなくて。でもテレワークのお陰で平日夕方の時間を確保しやすくなり、小美玉との関わりを増やすことができました。

―地元と関わりたかったんですね

やっぱり小美玉が好きなので、小美玉のために何かできることがあったらやってみたいんです。だから小美玉でこういう自分の時間を持てて、東京の会社にも所属し続けられるっていうのは、とてもありがたいですね。

―夕方からの時間が使えて、人生が濃くなった感じがしますね。

そうですね、通勤の5時間分を家族の時間や地元との交流などに充てられて、すごく濃く活用できています。

―茨城と東京を行き来する良さってありますか?

そういう意味では、都内だと色んなイベントや勉強会があるので、仕事帰りにちょっと参加できるのが良いですね。小美玉の良さで言うと、やっぱり自然の豊かさ。自然の中で子供を遊ばせたくて、いずれは戻ってきて子育てをしたかったので、それがいまできています。行き来することで、東京・茨城のそれぞれの良さを実感しています。

―就職先を探している茨城の若者にメッセージはありますか?

茨城にいながら勤められる就職先として、都内の会社も含めてもっと幅広く考えてもいいかと思います。あとは、若いうちは都内にいて、子どもができたらテレワークとかで茨城に戻ってくるのもいいかと思います。できれば、茨城にいつつ都内に勤めて地元でも色々貢献できるようなこともやる、そういう若い人が増えればなと思っています。

―テレワークを導入する企業が増えていくといいですね

うちの会社も色んな企業のテレワーク導入事例を参考に始めたみたいなんですけど、もっと増えればいいなと思いますね。企業にとっては人材確保になるし、地方にとってもいい形ですよね。企業が導入すれば、地方にも人が増えると思います。

―保田さんは、業種が合ってたからスムーズだったように感じますが

そうですね。自分としては業種が合っていたのであまり紆余曲折がなかったと思います。業種によるとは思いますが、企業側も「できないんじゃないか」っていう概念じゃなく、やれることをやっていくっていう風にポジティブに考えればいいと思います。ネガティブに言ってできないってなるよりは、やってみたほうがいいと思います。

―改めて、いまのご自身の状況をどう思いますか?

やっぱり小美玉からずっと都内に通うっていうのはちょっと不安だったのですが、今回会社のおかげでテレワークができ、その不安が解消できたのはとても嬉しいです。いまの会社に入って本当に良かったです。

保田さんの働き方・暮らし方からは、疲弊するのが当たり前だったこれまでの働き方がまさに改革されている様子がうかがえました。パフォーマンスを下げることなく会社にも貢献し、自分の暮らしを大切にできるテレワーク。企業がいい人材を確保するための大事な鍵を垣間見ることができました。

Writer Profile

栗林 弥生

1982年水戸生まれ、Uターン型ライター。報道カメラマンの父に憧れ、東京の番組制作会社でドキュメンタリーなどの番組を制作。現在は水戸で子育てと仕事の両方を楽しむ。人柄に触れるしみじみとした話を聞き、書くことが大好物。

Photo:鈴木 潤