自宅に居ながら仕事ができるテレワークは、働き方改革に向けた取り組みだけでなく新型コロナウイルスの影響もあり、より一般的になって来たと思います。

「オフィスに出社せずに仕事ができる」ということが当たり前になってくると、仕事のやり方そのものにも選択肢が増えてくるはず。そして、その一つに「副業」があります。
では、茨城県ならではの本業と副業の両立スタイルにはどのようなものがあるのでしょうか。今回は、その実践例の一つとして、本業にインターネットによる古物販売、副業に日立市の「樫村ふぁーむ」で農業に従事する須藤さんに話を伺いました。

―まずは、須藤さんの本業と副業について教えてください。

須藤 出身は千葉県松戸市で、仕事も松戸市で続けていましたが、5年前に茨城県日立市に移住してきました。3年ほど前から本業と副業のデュアルワークで働いています。

本業は東京の会社でのインターネット販売の仕事で、古美術品やアンティーク雑貨、レトロなおもちゃなどを取り扱っています。フリーランスではなく東京の会社に所属しているのですが、新型コロナウイルスの影響が出る前から、日立市の自宅でテレワークを続けていました。インターネット販売の仕事ですから、お客様のメール・電話対応、Web更新、商品の撮影など、自宅でできる仕事が多いです。

副業では、日立市にある「樫村ふぁーむ」で働いています。週に2回、1日3時間のペースで農作業をしています。作業はその日によって異なりますが、種まき、草取り、野菜の収穫がメインですね。毎回朝礼の時に「今日はこの作業お願いします」と指示があって、今日だったらネギの収穫を担当していました。

―副業を始めようと思ったきっかけは?

須藤 本業の仕事柄、ずっと自宅で作業をすることが多いので、もっと違う刺激が欲しいと思っていました。会社としても副業はOKですし、何かできないかなと日立市内のハローワーク求人を探していたところ、たまたま樫村ふぁーむさんの求人に出会いました。求人票に乗っている募集要項の条件や家からの職場までの距離も問題無し。それに、樫村ふぁーむさんはWebサイトも持っていて、ハローワークだけでは分からない情報も見ることができたので、実際に面接に行く前の参考にもなりました。

樫村さんとの面接のときには、「週にどれぐらい、何時間働けるか」というところを中心に話し合っていきました。今考えるとすこし主張しすぎだったかな、とも思うのですが、時間のこと、自分の本業のことなど、伝えるべきことはしっかりと伝えました。

―副業を始めてから感じた、気持ちや生活の変化はありますか?

須藤 やはり、気持ちのメリハリがつくようになりましたね。以前は自宅でずっと1人で作業を続けていたので、気が滅入ってしまうこともありました。でも、副業を始めてからは、外に出て体を動かし、いい汗をかく機会も増えたので、気持ちにメリハリがつくし体調もよくなってきました。畑までは自転車で通勤していることもあってか、もともと体が細い方なのですが、体力がついてきたような気がします。それに、ご飯も美味しく感じるようになりましたね。

樫村さんやパートの皆さんとも仲良くさせてもらっていますし、会話をする時間も増えました。樫村ふぁーむの皆さんとは、野菜の育成の話や、ちょっとした世間話など、とりとめのない会話も気軽に交わしています。

―ITと農業の仕事を両立していくうえで、大変だと思うことは?

須藤 副業のほうもなるべくスケジュール通りに行けるようにはしたいのですが、本業の仕事が変則的に入ってくることもあり、樫村ふぁーむでのシフトを調整してもらうこともあります。本業あっての副業、という側面もあるので、柔軟に対応して頂けるのは本当にありがたいです。とはいっても、いつも申し訳ない気持ちになりますね。

―副業をしながら茨城県で暮らすことへの率直な感想を教えてください。

須藤 やっぱり、充実を感じますね。家でずっと仕事を続けていると気持ちが滅入ってきますが、定期的に農業の仕事をすることで気持ちも改まる。ずっと家にいながら気持ちにメリハリをつけていく、ってなかなか難しいですしね。

それに、その日出荷した野菜の余った分を頂けることもあって、嬉しいですね。パートの方が僕の分の野菜も取っておいてくれて、「これ持っていきなよ!」って。新鮮で美味しい野菜を頂けて、家計的にもとても助かっています。

―いま副業を考えている人へのアドバイスはありますか?

須藤 まずは、本業として働く環境が「副業可」であることと、副業をすることについて会社や家族からも理解を得ることが大切だと思います。

また、副業をやるのであれば、本業と全く違う業種にチャレンジしてみるのも良いのではないでしょうか。気持ち的にも新鮮になるし、メリハリもつく。それに、本業の中でも、新たな視点を発見できるようになると思います。

須藤さんのような、副業で農業に関わる働き方は、農業が盛んな茨城県ならではのスタイルかもしれません。インタビューの中で語られたように、本業を続けながらも「体を動かし、気持ちにメリハリをつけられる」ようになっていくことで、日々の暮らしもより豊かになっていくはず。デスクワークが多い方やフリーランスの方はとくに、運動不足を解消し、新たな刺激と発見を得る機会になっていくと思います。

Writer Profile

佐野 匠

1985年茨城県下妻市生まれ。20代半ばに東京から地元に戻るも、キャリアもスキルも学歴も無かったため、悩んだ末にボランティア活動に参加し、その中で写真、文章、デザイン、企画、イベント運営などのノウハウや経験値を蓄積。最近やっとライターやフォトグラファーの仕事を頂けるようになりました。カッコいいと思うものは、マグナム・フォトとナショナルジオグラフィック。

Photo:鈴木 潤