コロナ禍の今、採用活動もオンライン化が進み、従来のやり方ではうまくいかないコトも多く、企業においても変化が求められてます。
企業ではどのような対応が必要なのか、就職・雇用・人材育成を通じて、活気あふれる地域づくりを目指す「特定非営利活動法人 雇用人材協会」の佐川 雄太(さがわ・ゆうた)さんにお話を伺いました。


佐川さんによる学生に向けた記事は茨城県の移住定住促進サイトで記事化されています。
併せてご覧いただければと思います。
https://iju-ibaraki.jp/feature/people/5485.html


企業説明会や合同説明会などの中止で、企業と学生をマッチングさせる機会が減っているなか、どのように就職・採用活動が展開していくのか。コロナ禍を生き抜く企業のあり方や自社PRのコツなど、求人や働くことについての「これから」を具体的に教えていただきました。
※本記事は2020年5月に取材しました。当時と状況は変化しているかもしれませんが、当時を記録する記事になると思っています。

茨城県の求人について、新型コロナウイルスの影響はありますか?

5月の話ですが、茨城県内の企業にアンケートをとりました。
返信をいただいた25社の内訳は、企業規模では従業員100名以下の企業が3割、100名から500名の企業が7割。業種ではIT系・カーディーラー・建設・広告・小売・ホテル・学習塾・商社・福祉・物流など様々です。
新型コロナウイルスを受けての「業務への影響」・「採用への影響」・「教育研修への影響」について伺いしました。
業種によっては売り上げは2割以下に、飲食やホテル関係の会社では1割以下になってしまいました。今は少し回復していると思いますが、厳しい状況は続くのではないでしょうか。

感染状況は一進一退ですが、経済の厳しい状況は続きそうですか?

車や住宅など耐久消費財や高価なものは買い控えがあるので、カーディーラーな一時的に売上げが下がるのではないかと思います。
それ以外にも、イベントの中止で警備会社等の関連する業種は厳しい状況だと思います。それら厳しい業界では採用活動に関しても見通しが立ちにくいところがありますね。
一方で、人材投資が必要だと思っている企業は変わらず力を入れていくと思います。
茨城県内の企業に新卒採用に関して伺うと、回答のあった26社中16社が新卒採用を行っています。その中の4社はコロナ禍であっても募集人数を増やしていました。
興味深いのは、「採用する学生の質が上がった」という回答が返ってきたこと。コロナ禍でも学生としっかり繋がることができる会社には就活生たちからのアプローチが集中し、結果的に優秀な学生に出会う確率も高くなったということですね。
今、採用できる余力のある企業はチャンスかもしれません。

コロナ禍で質が高い採用活動ができる企業とは、どのような企業ですか?

Webサイトを使って積極的に情報発信ができる企業は、たとえ合同説明会を開催できなくても、学生に対しても情報を届けることができます。
実際のところ、自社を知ってもらうためのツール選びはなかなか難しいです。就採用サイトを使うと認知度は上がっても費用が高い。
SNSを使うのはコストは抑えられますが、学生との接点を生む工夫が必要です。これからは、「いかに自社を発信していくか?」ということを考える必要があります。

企業情報を発信していくときのヒントはありますか?

やった方がいいのは、自社サイトを今風にアップデートしたり、採用サイトをきちんと用意したりすることです。なおかつ更新をしっかりと行うことが大切です。
学生は企業を調べるときに必ず検索しますのでWebサイトをきちんと作っておくことは重要だと思います。
「どんな経営計画か?」「どんな人材を採用していきたいか?」「会社の理念はどんなものか?」「これから社会に与えようとしているインパクトは何か?」など会社の核となる部分をしっかり発信していく必要があります。
企業の採用サイトの中には、表面的・抽象的な情報を発信しているところも多いですが、きちんと具体的に発信することの重要性が高まりましたね。
また、自社Webサイトは、テキストだけのサイトよりは、テキストと写真、映像コンテンツを融合させるとより、具体性や雰囲気が伝わり有効だと感じます。たとえば、企業PRのショートムービーや社員インタビュー動画などををたくさん作ってみると短い時間で印象深く企業の想いを知ってもらう機会になると思います。
企業と学生、それぞれの価値観をすり合わせていくのが、採用・就職活動の側面です。

最近の学生が持つ働き方の価値観とはどのようなものですか?

コロナ禍以前から安心・安全・安定を意識する指向はありました。
実家から通える企業を選ぶという意識も強いと思います。これには地縁的な理由だけでなく、経済的な理由もありました。
都内の企業に比べると茨城県の企業の給料はやはり低い傾向ですし、1人暮らしをすると経済的負担も大きくなってしまいます。
しかし、今はテレワークの導入で、地方も都心も関係なくなってきています。
就職活動もオンライン化することで、学生は時間とお金に余裕が生まれるので、より企業の理念や経営計画を判断して自分に合う会社を選んでいくことができるようになります。

テレワークの導入で採用活動はどのように変化していきますか?

コロナ禍が長期化していくと、オンラインでの就活も徐々に定着していくのではと思っています。
たとえば、就職活動の序盤はオンラインで行い、エントリーシートを通過して後半になるにつれ対面での比率が増えるとう感じで対面とオンラインの面接を両方を行う、ハイブリッド型になってくると思います。
とくに企業説明会・合同説明会は、オンラインが積極的に取り入れられる可能性が高いと思います。企業側からすれば説明会の会場を用意しなくても済むわけですし、学生の負担も減ります。

オンライン説明会を自社アピールに上手く活用する方法はありますか?

まずはオンラインならではの方法を取り入れてみると良いと思います。
オンライン説明会も有効ですが、会社説明動画などはアーカイブ映像でいつでも見ることができますので、「スマートフォンを使って社内のガイドツアーを配信する」など職場の雰囲気をリアリティを伝えるなどいいかと思います。
地方に本社を置く企業としても、オンラインであることをフル活用して採用活動をした方がいいと思います。企業は学生目線で、「何があった方がいいのかな?」ということを考えて用意していくことが大事ですね。

コロナ禍で企業のあり方に変化はありましたか?

企業自身が持っている価値観が可視化されたと感じています。
企業が理念や思いを伝えることについて、二つの軸があると思っています。一つは、その企業が世に出しているサービスや製品で伝えること。もう一つは、社内制度や仕組み、環境で伝えることです。企業の発言と行動の一致が、社会に反映された企業の取り組みを見やすくします。
茨城県内では、ある酒類メーカーが消毒用の高濃度アルコールを作ってから、他の酒類メーカーも作り始めるようになりました。酒類メーカーが製造した高濃度アルコールに対して、国が「消毒用なら酒税免除」という特例を作るという動きがありました。
一企業の行動が社会を動かしたのです。コロナ禍があって、変化に合わせた企業独自の取り組みが始まっています。

佐川さんからは、様々な企業が今まさに厳しい状況に向き合い、変化の波をとらえようとしている様子を伺うことができました。新型コロナウイルスの暗い話題が多い中で、環境の変化を前向きに乗り越えようとする推進力を感じます。未曾有の困難を見つめる力は、企業の、社会の未来を見通す力になるかもしれません。

Writer Profile

佐野 匠

1985年茨城県下妻市生まれ。20代半ばに東京から地元に戻るも、キャリアもスキルも学歴も無かったため、悩んだ末にボランティア活動に参加し、その中で写真、文章、デザイン、企画、イベント運営などのノウハウや経験値を蓄積。最近やっとライターやフォトグラファーの仕事を頂けるようになりました。カッコいいと思うものは、マグナム・フォトとナショナルジオグラフィック。