茨城県笠間市にある、株式会社トランク(以下、トランク)。主に県内企業などのブランディングと、それに伴うロゴやウェブサイト、ポスターなど様々なデザインをしてきた。

設立当初から大切にしてきた信念は、「本当にお客様の役に立つもの」を作ること。そのために、お客様と対話をして、思いや課題を抽出し、納得のいくコンセプトを定めてから制作をしている。代表を務める笹目亮太郎(ささめ・りょうたろう)さんは、その制作に至るまでの対話がお客様にとって大きな気付きとなり、空気が動く瞬間を何度も経験した。そしてその対話は、伝えたい価値やメッセージを正確にデザインに込める上で欠かせないことであり、トランクの強みだと確信していく。その強みを「BANSO」(バンソー)というブランド構築サービスに進化させ、これからはこのサービスによって伝えたい価値やメッセージがより明確になったものをデザインしていく方針だという。

2021年に開始した「BANSO」は、ブランド構築の必要性を感じて導入する企業が増え、トランクでは作り手が足りなくなっている。そのことから今回募るのは、笹目さんがお客様との対話から見出したことを形にする人材だ。「本当にお客様の役に立つものを作る」、そんなトランクの採用について詳しく話を聞いた。

笠間という街に根を下ろし、作家たちと共に

陶芸の街として知られる笠間。笠間焼は江戸時代に生まれ、いつしか笠間はそれぞれの作風を受け容れる土壌となり、40年間続く大規模な陶器市「陶炎祭」(ひまつり)では多彩な作品が並ぶ。陶芸以外の様々なクリエイターたちも多く、山間部や市街地にアトリエを構えている。

クリエイターたちが気に入る笠間とはどんな街なのか。茨城県陶芸美術館や笠間日動美術館、北大路魯山人の旧宅など文化的な見どころがあり、国内最大のスケートパークや大きな公園、飲食店など暮らしを楽しむ場所も多い。周囲の山にはグランピングやキャンプの施設もあり、そばや栗なども有名だ。そういった都会とは違う暮らし方をしながらも、笠間市内にある友部駅から東京駅まで電車で最短1時間10分と、都心へのアクセスが良いこともクリエイターにとって便利なのだろう。

トランクのオフィスは、そんな笠間の顔ともいえる笠間稲荷神社から歩いて5分の静かな通りにある。デザイン会社が多い水戸ではなく笠間で独立した理由は、「窯業地の笠間で、作家のことを誰よりも知っているデザイン事務所があったら面白い」という知人からのひと言に、笹目さん自身が納得できたからだという。

2011年の東日本大震災では、被災した作家たちをデザインを通して支援し、かつて民藝運動の中心となった濱田庄司の孫、濱田友緒さん(益子町)との縁も生まれた。今でも笹目さんは「勝手に民藝運動」と称し、窯元を支えるクラウドファンディングなどに無償でデザイン提供することをライフワークにしている。

笹目さん「民藝って知れば知るほど面白くて、工業化されて無くしてしまった魅力があるんですよね。今は民藝が無くなりつつあるけど、100年も続いてきた歴史に自分が関わっているのって、ちょっと楽しいじゃないですか」

デザインは「本当にお客様の役に立つ」ものでありたい

そんな一面を持つ代表の笹目さんに一番近い存在は、名刺の肩書が「右腕」となっている助川智美(すけがわ・さとみ)さんだ。助川さんは笹目さんのかつての同僚で、独立の翌年に合流した。その肩書の通り、常に2人でお客様の元へ行き、2人の感性をフル回転してお客様の思いや課題を探り、引き出す。助川さんは笹目さんの「本当にお客様に役に立つものを制作する」という信念を最も理解しているため、社内では2人の忌憚の無い議論が繰り広げられる。

「本当にお客様の役に立つデザイン」とは、具体的にどういうことだろうか。

笹目さん「たとえば商品パッケージのリニューアルの依頼があったとします。プロがデザインするのですから当然素敵なものになりますし、それは依頼したお客様にとっても喜ばしいことではありますよね。ですが、それは本当のゴールではないと私は思います。パッケージリニューアルの目的は『本来あるべき姿で市場に受け入れられること』、つまりそれが“売れる”ということだと思うんです。だから、デザインの根拠を大事にしたい。どんなに素敵なデザインであっても、根拠が無ければ売れないし、売れなければ我々に依頼をしていただいた意味が無いと考えています」

その根拠を一緒に考えながら作っていくのは、アートディレクターでありグラフィックデザイナーの岡部和弘(おかべ・かずひろ)さんだ。笹目さんも助川さんも制作をするが、根拠を積み重ねるためには、お客様の言葉の奥にある本当のニーズを引き出すことが必要なので、自然とお客様との時間が長くなり、帰社してから制作に取り掛かると時間が足りない。そのため岡部さんのように制作に専念するスタッフがさらに必要なのだそう。

この募集にあたり、しっかりと伝えたいことがあるという。

笹目さん「デザインをしていて行き詰まったときに『これは自分の仕事だから、自分ひとりでなんとかしなきゃ』という考えは必要ありません。それはなぜかと言うと、私たちの仕事はお客様が本質的に必要としているものを納品することだし、お客様から会社として受けている仕事だからです。つまり、トランクとして『これでいいね』というクオリティのものを滞り無く納品することがゴールなので、『この先どう進めたらいいでしょう?』って言ってくれたほうが全然いいんです」

実は、助川さんも初めは「行き詰まった」と言いにくかったそう。しかし笹目さんと一緒に働くうち「何ができなくて何ができるのか」を整理して、お客様のために前に進みたいだけだとわかるようになってきて、今は安心して相談できているという。

助川さん「美大などで作品を作って来た方にとって、率直にそれを言うのは結構勇気がいることだと思います。まして若い人なら、私たちのような年齢の人には言いづらいかもしれません。でも笹目はアートディレクターだから一緒に考えることが仕事だし、私も話しやすい環境にしたいと思っています」

長年の信念から自然と生まれた「BANSO」

そうやって根拠を追求する制作スタイルを続けてきたことで生まれたのが、「BANSO」だ。何を作るときもお客様の言葉を鵜呑みにせず、疑問を問いかけて納得をしてから制作をしてきた笹目さん。お客様との会話のなかにある小さな違和感を見過ごさず、丁寧にひも解きながらブランド価値を探るうち、お客様にブレークスルーが起こる瞬間を何度も目撃した。ブランド価値を一緒に見つけることはお客様に役立つと確信して、これまでのやり方をひとつのフォーマットに落とし込んだ。

改めて「BANSO」を説明すると、企業内の課題に気付いてブランドコンセプトとして言語化するサービスだ。数ヶ月かけてトップの思いや社内の声を聞いて課題を抽出し、お客様のあるべき姿を見出してブランドコンセプトとして言葉にする。その過程を経た制作物は課題とデザインが密接にリンクするため意図がわかりやすく、ビジネスでの結果にも繋がりやすいのだという。

笹目さんは手応えを感じている。あるBtoB企業がBtoC事業に参入する際に「BANSO」を導入して、「高い技術があるのに地域に知られておらず、自社に誇りが持てない」という大切な気付きを得た。また、あるケースではヒアリングの過程でお客様の意識が大きく変化し、お客様の望む形でビジネスが変化した。そういった奥深くの本質に触れることはまさに「カウンセリング」であり、お客様が自信を持って働くきっかけになった。

「BANSO」は、トランク自体のアイデンティティも確立した。2人は嬉しそうにこう話す。

助川さん「お客様と生身の人間同士のやりとりができることが、今すっごく面白いです。仕事で感じた喜びとか誇らしい気持ちとか、ときには悔しさや怒りとか、お客様が発した言葉のなかにはそういうきめ細かい肌触りがあるんですよね。その感触をデザインに込めることに惜しみ無く取り組めるようになったのが大きな喜びで。お客様のためになりたいから、自分の自信が無い部分がどうでも良くなってきて、デザインに行き詰まったら笹目にすぐ『この先どうすればいいですか』って聞ける思考に自然となったんです」

笹目さん「デザインで結果を追求する試みはずっとやってきたことなので、『BANSO』がお客様の何らかの利益になっていくことが実感できて楽しいです。お客様がみんなでぶっちゃけて話をして、それを私たちが聞いて言葉にする。そしてその言葉が制作物として見える形になって、『これでいいのだ』という気持ちで働き続ける自信に繋がっていく。内部の気持ちがきちんとリンクしているデザインは、世の中にスムーズに伝わっていくと実感しています」

その「BANSO」を茨城で展開する上では、どんな可能性があるのだろうか。

笹目さん「茨城には可能性があると思います。茨城はBtoBの企業が多くて、これまで経営の川上にデザイン視点が入ってこなかったところが多いのですが、今後はBtoB企業こそ価値を言語化して外に伝えていく必要があると思います。自分の気持ちを表す言葉を持たないお客様が結構いることを感じるし、そこに対してわかりやすい言葉で価値を共有してからビジュアルに展開するやり方は茨城に合っていると思います。そしてそれをやれるのが、トランクの強みだと思っています」

転職して、トランクのクリエイティブを実感

その「BANSO」の可能性を、作り手として支えている岡部さん。岡部さんは元々、都内の老舗デザイン制作会社に15年ほど勤め、クリエイティブディレクターとして大手企業の有名な商品パッケージやポスターなどを多く手掛けてきた。しかしデザイン業界ならではの忙しさから岡部さんは子育てに関わることができず、妻は子育てをしやすい環境を求めて実家の水戸に引っ越した。岡部さんは単身赴任をしながら茨城に何度も通ううちに定住の気持ちが芽生え、トランクの求人募集を見つけて入社した。

岡部さん「トランクのことは『すごくクオリティの高いデザインを作る会社があるな』という認識でいました。地方で転職するとなったとき、チラシや型にはまったものを繰り返し作るのは嫌だなと思っていたのですが、トランクはクライアントごとに全く違うアプローチで毎回ベストなものを提供しているのがわかって。クリエイティブを信じていて、クリエイティブで良くしていくという思いがあるんだなと思って応募して、入社したらやっぱりその通りでした」

トランクでの制作は、笹目さんと助川さんがヒアリングで掴んだ方向性について一緒に話し合い、お客様や制作物の“あるべき姿”を共有したあと、ディテールは作り手に任される。岡部さんはこれまでロゴやウェブサイトは作ったことが無かったことと、形から入ってしまう癖からの苦労もあったというが、やりやすさも感じたそう。

岡部さん「トランクでは『こういう形しかないよね』というのが見えてから作るので、お客様への提案数が1、2案で納得してもらえるのがすごいなと思いました。2人が言葉を引っ張り出す力が強いので形にしやすいです。ただ、ちゃんと思いが乗っているものづくりなので、途中でどう落とし込んだらいいのかわからなくなるような厳しさはあります。でも2人に相談をすると必ず答えが返ってくるので、あまり自分で抱え過ぎないようになりましたし、意図が伝わる深みのあるデザインが作れたときのやりがいは大きいです」

社内の相談しやすい雰囲気に慣れた岡部さんのパフォーマンスは上がり、今や岡部さんの考えたロゴの採用率は社内一なのだという。

そんな岡部さんは今、自宅で週に2回リモートワークをしている。職業柄平日は帰宅が遅く、家族と過ごす時間が少なくなりがちだったので笹目さんにリモートワークの相談をしたところ、すぐに「OK」が出た。打ち合わせが無い日に自宅で仕事をし、家族で夕ご飯を食べて子どもをお風呂に入れるなど、家族の時間を持つことができている。

岡部さん「なんでも相談すれば聞いてくれる会社だし、仕事もすごくクリエイティブを発揮できる会社だと思います」

求む、ディレクション視点を育てたい人

これからも、「BANSO」は茨城の企業に必要とされていくだろう。

助川さん「私たちがお客様に何を提供したいと感じて帰ってきたのかを、作り手として自分なりに掘り下げたり、お客様に直接会っていないからこその視点で問いを投げかけたり、そういうことを面白いと感じる方に合っている会社だと思います。そういうディレクション視点は最初から完璧である必要は無いですし、身に付けたいという姿勢があれば大丈夫です」

笹目さん「デザインは『時間になったから終わり!』と区切ることのできない仕事なので、やはりハードではあると思います。でも少なくともトランクで大切にしているようなやり方であれば、その大変さは報われるのではないかと思うんです。私の知人は都内で華やかなデザインの現場に入りましたが、その過酷さで人が次々と入れ替わり、『私ではなくてもいい仕事だ』と感じてそこを離れたそうです。助川や岡部は、この田舎の環境で『自分にしかできない』仕事をしています。ここで一緒に働く人には自分にしかできない仕事を見つけてほしいですし、ただやりがいがあれば良いわけではなくて、お客様のお客様にも思いが伝わって、仕事に見合った収入が得られて、評価もあって、そういうものができるようになっていくと良いなと思っています」

デザインの道に入って長い人も短い人も、「自分は何のためにデザインをするか」を考えたり、ディレクション視点を育てたい人にとって、トランクはひとつの選択肢かもしれない。

企業名 株式会社トランク
ホームページ https://trunk-inc.jp/
住所(勤務地) 茨城県笠間市笠間1605 キャリアによっては週2程度在宅リモートワーク可
雇用形態 正社員
募集職種 1.アートディレクター/デザイナー(要実務経験)
2.webデザイナー(要実務経験)
3.コーダー(要実務経験)
採用人数 若干名
給与 能力・経験・年齢を考慮し決定
待遇
福利厚生
交通費支給
社会保険完備(雇用、労災、健康保険、厚生年金)
規定勤続年数により退職金積立保険加入
勤務時間 10:00~19:00 所定時間外勤務あり
月曜日は基本13:00始業
休日 毎週土曜日・日曜日
国民の祝日
年末年始、夏季休養(お盆休み)
仕事内容 職種1.2.はデザイン業務、3.コーディング業務
必要な資格、経験、学歴 特になし
求める人物像 ものづくりが好きな方、デザインが好きな方、達成欲の強い方
募集期間 掲載開始から1年間
※募集人員が埋まり次第終了とさせていただきます。
選考プロセス まずは下記「応募ボタン」よりご応募ください。応募後、応募企業より直接ご連絡させていただきます。
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    1.アートディレクター/デザイナー(要実務経験)2.webデザイナー(要実務経験)3.コーダー(要実務経験)

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    Writer Profile

    栗林 弥生

    1982年水戸市生まれ。報道カメラマンの父と記者だった母に影響を受けテレビ業界を目指し、東京の番組制作会社で「あなたが主役50ボイス」「アジアンスマイル(モンゴル)」(共にNHK)など、人の思いを描く番組を主にディレクションする。2014年に結婚を機に水戸に戻りインタビューなどの記事を書いている。