(株)常陸風月堂は、日立市にある和菓子店。創業は1948年。地元では誰もが知る老舗だが、3代目を継いだ藤田浩一(ふじた・こういち)さんは、旧来の常識にとらわれない発想で和菓子を提案し続け、周囲に驚きと笑顔の輪を広げている。

ワインとペアリングする新感覚和菓子や、コーヒーのお供にと提案するオレンジ風味の羊羹(ようかん)、そして最近では店の顔となりつつある1万円超の高級羊羹「万羊羹」など、伝統の継承に留まらない革新を目指す藤田さん。仕事への想いを伺うと、(株)常陸風月堂が掲げる「笑顔の連鎖と循環」という理念の先に、笑顔と革新とが地続きでつながる幸せな世界が見えてきた。

企業理念は笑顔の循環

(株)常陸風月堂の始まりは、1948年。私の祖父が地元の小売店向けに開いた饅頭の卸売店でした。その後、和菓子店として店舗を構え、以来70年以上地域の皆さまに支えられています。

地元では「老舗」と呼ばれる歴史の長さではありますが、「伝統は革新の連続で作られる」という言葉を胸に、日本の文化や伝統を未来に残しながらも、誰もが笑顔になれる挑戦を続けているところです。

私たちには、従業員誰もが知っている企業理念があります。それは、「笑顔の連鎖と循環」。

なぜ「笑顔」かというと、和菓子という存在はとても嗜好性の高い商品だからです。極端な話をすれば、和菓子を食べなくたって人は生きていける。だからこそ、食べたお客さまが「幸せな気持ちで笑顔になる」ことこそが和菓子の価値であり、それを作る私たちの存在意義なのです。
保守的な部分も多い業界のなかにあって、私たちが革新を目指し、挑戦し続ける理由のひとつも「こんな味食べたことがない!」というお客さまの笑顔を見たいからでもあります。

「笑顔の循環」と言葉にして掲げたのは、私が店を継いでからですが、根本の部分は創業から変わらず受け継がれてきたことのようにも思えます。「市街地から離れた店にわざわざ足を運んでくれるお客さまには、最高の食材と製法にこだわったお菓子を供するのが我々の矜持だ」というのが「2代目」である父の考えですから。その父が開発した、手仕事でしか再現できない味の生クリーム大福「かまくら」は発売から30年ほどたってもお客様に愛していただいているこの店一番の看板商品です。

「人を笑顔にする」というのは、職人として和菓子と向き合う時、経営者として店を守る時、そして誰かと接するひとりの人間としても、私にとっての全ての指標となっていることでもあります。

当社で働くスタッフには「私たちが起点となって、笑顔が広がる会社でありたい」という私の想いを、社員・パート従業員を問わず繰り返し共有させてもらっています。

関わる人全てに笑顔を

笑顔の循環というのは、お客さまに対してだけではないものだと思っています。なんだか綺麗事のように聞こえてしまい恥ずかしいのですが、「働いてくれている従業員の笑顔」そして「材料の仕入れ先や、食材を作ってくださる農家さん」など、当社に関わってくれる人、誰もが笑顔になるような会社でありたいというのが私の願いです。

一番小さな例をあげるなら「こんな事言ったら、相手は笑顔じゃなくなってしまうかもしれないな」などと、ちょっとした心遣いで実現することだったりもします。

もうひとつ、経営的な側面を正直に取り上げると、私たちも考えねばならない和菓子業界が抱えている問題があります。
例えば、この15年の間に洋菓子の販売価格は倍近く値上がりしていますが、対して和菓子の販売価格は業界内でもほぼ横ばいで、大きな値上がりはありません。その間にも原材料費や物価は上がっているので、当然利益が下がっていることになります。
つまり従業員や仕入れ先に還元出来る利益もそれだけ減っているということになりますね。これは、関わる人を笑顔に出来ているとは言い難いのではないかと、長く悩み続けていることなのです。

私たちの商品に「万羊羹」という羊羹があります。飯沼栗という茨城県のブランド栗を贅沢に使用した羊羹で、販売価格は1万円を超える、和菓子としては異例の商品です。インパクトのある価格が注目されがちですが、召し上がって頂いたお客さまには「こんな羊羹はじめて」「この美味しさなら納得の値段」と好評を頂いており、全国から注文を頂ける「当社の顔」となりました。
お陰様でメディア掲載や世界的なパッケージの賞である、ペントアワードの受賞など、何かと話題に取り上げて頂ける商品になりました。
私としては「やっとみんなが幸せになれる価格を実現できた。願いが身を結んだ」と、まずは一度、胸を撫で下ろす事ができた思い入れのある商品でもあります。

もちろん、万羊羹だけで問題の全てが解決できる訳ではありませんが、当社としてはこれを皮切りに、これからも少しづつ行動を起こしたい課題です。そのためにも、価格に対してお客さまが納得してくれるような説得力のある商品を生み出し続けたいというのが、経営者として、そして和菓子職人としての想いなのです。

まずは挑戦。間違いも「気づき」であって失敗ではない

ここまで、会社のビジョンについて色々とお話させていただきましたが、逆に考えれば、「笑顔を生み出せることなら、誰でも何にでも挑戦していい」というのが私の考えの全てです。これから一緒に働く方には、「新人だから」や「業界の経験は無いから」とは思わずにどんどん挑戦をして欲しいと思っています。

誰でも失敗は怖いと思います。
私も、跡継ぎというプレッシャーから、長い間「間違う」のが怖くてたまりませんでした。
でも、語弊があるかもしれませんが「和菓子(=仕事)は自分がやりたいことを実現するためのツール」だと気づいて、気持ちが楽になりました。

そう考え直すと、不思議と挑戦することも、誰かに助けを求めることも素直にできるようになったんです。分からない事や知りたい事があるのなら、自分より詳しい誰かに聞いてもいいし、会いたい人がいるなら、違う業界の方だろうと教えを請うてもいいと思えた。

お酒とペアリングする和菓子は、バーテンダーやソムリエ、シェフといったその道のプロとの出会いや、頂いたアドバイスがなければ実現しなかったかもしれませんし、万羊羹が話題になったのも、美味しい栗を教えてくれた方や、デザイナーによる説得力あるパッケージデザインあってのことです。

もちろん、メディアで取り上げて頂いているような商品の影では、私も数えられないくらい失敗を重ねています。誰も手に取ってくれない和菓子を提案して先代に注意された苦い思い出もあります。

でも、今では失敗をするというのは「この選択は『違うんだな』と気づける行動を起こせた」という証明だと考えられるようになりました。そう考えると失敗するのも悪くはない。だから、一緒に働く方も怖がらずに行動をして欲しいと思います。職人的な挑戦でも経営的な視点でも、どんどん提案をして欲しいんです。突拍子もないことをしたっていい。やってみなければ分からないことも多いですから。

その人の人生が、菓子をつくる | (株)常陸風月堂の求人について

ー現在の体制と募集している仕事の内容を教えてください

現在の(株)常陸風月堂では、私の他に、和菓子の製造を行う社員が2名と、製造の補助や販売を行うパート従業員8名が働いています。加えて、当社の2代目である父が現役の職人として厨房に立ち、母が販売統括として、接客や在庫管理などのマネジメントとバックオフィス全般を担っています。

私が商談や出張等で不在にする際は両親がお店を見てくれているのですが、今後、国内外への販路拡大を見据えて体制を強化したく、協力してくれる方を探しています。もちろん、独立を目指しそれまでの数年間働きたいという希望も歓迎ですし、挑戦したいことがあり、当社で経験を積みたいという動機でも結構です。ここで働く時間をぜひ「自分の価値を高めるため」に使って欲しいと思っています。

菓子職人、マネジメント職、共に募集していますが、経営の視点を持ち、両方を兼任できる方も大歓迎です。

今後、台湾をはじめ海外への展開に注力する予定のため、仕事のやり方を一緒に構築できる方だとありがたいです。いずれの立場でも、業務の改善や、DXなど、どんどん提案して欲しいです。特にマネジメント職については接客、在庫管理から通販対応、バックオフィスと担当の業務が広いため、入社後に得意領域に合わせて仕事の内容を改めて組んでいけたらと考えています。

ー必要なスキルや働く人に求めることはありますか?

私たちの仕事は、専門性が高い仕事でありますが、入社時点で一定のスキルは求めません。職人の場合、製菓学校や職場で実技を経験していたり、手先が器用であることはアドバンテージになりますが、「お菓子作りが好き」という気持ちや「(株)常陸風月堂のビジョンへの共感」があればまずは十分。技術は回数を重ねればカバーできますし、最後は、仕事に向き合う姿勢や人間としての魅力こそがものを言うと考えているからです。

私は和菓子職人になって約20年になりますが、今でも気持ちが急いでいる時に作ったお菓子の仕上がりには「焦り」が見えてしまう。お菓子って、そのくらい「人間」が反映されるものです。だからこそ、人生のあらゆる経験が生きてきますし、ちょっとした、相手への心遣いの気持ちなども大事なのです。

例えば、コーヒーに合う和菓子の提案はコーヒーが好きな人にしかできないでしょうし、ワインとペアリングする和菓子を開発出来るのは、ワインを飲んだ事がある人だけでしょう。仕事以外で得た引き出しが役に立つ時が来るかもしれません。

「プライベートでも仕事のために勉強しなければならない」と気負わなくてもいいので、趣味に打ち込む楽しい時間も、時に経験するつらい体験も、自分を成長させてくれる大事な人生の要素だと気づける人と一緒に働けたら嬉しいです。

ー革新は笑顔と並んで(株)常陸風月堂の重要なキーワードですね。それとは反対に、会社として絶対に譲れない部分はあるのでしょうか?

基本的には、「笑顔」につながる提案ならお客さまに対しても仕事内容に関しても、レシピ開発も全てどんどん実行して欲しいと思っています。
ただ、私たちが譲れないのは「お客さまとの会話」と「手仕事の味」ですね。買い物に行った先で顔を覚えて声をかけてもらえるのはやはり嬉しいものですし、今までの味を愛してくれるお客さまを裏切りたくありませんから。

先ほども例にあげた生クリーム大福「かまくら」は30年一番人気を守る人気商品なのですが、支持いただいている理由は、手仕事でしか再現できない柔らかな求肥と、機械を通せば分離してしまうほどの濃厚な味わいの生クリームだと思っています。
生産性だけを考えるとレシピを変更して機械を使っても良いのかもしれませんが、それは「(株)常陸風月堂の味」ではなくなってしまうんですね。お客さまの笑顔に繋がらない選択は、いくら能率がよくても譲ることはできません。

入社1年目の製造スタッフ青天目さんのお話 

2022年8月にパート入社後、現在は製造部門の社員として働く入社1年目のスタッフ・青天目さんにお話を伺った。 

ー入社の経緯を聞かせてください

製菓学校を卒業後、一時期は別の仕事に就きましたが、和菓子職人という夢を諦められずにいました。そんな折に、(株)常陸風月堂の求人を見つけたのが入社のきっかけです。最初はパートとして主に接客に携わっていました。昨年12月からは正社員になり、現在は厨房の中で少しづつ菓子の製造を教えてもらっています。

ー1日のスケジュールや、担当している仕事を教えてください

私の場合ですが、朝7時の勤務開始と共に、洋菓子類や餅菓子の準備をして、商品をショーケースに並べるところから1日がスタートします。朝の準備で任せてもらっている担当はクレープで、日によっては100枚ほど焼くことも少なくありません。柔らかい生地を薄く均一な仕上がりに焼き上げるのは難しいのですが、だんだんと上達してきて更に楽しくなってきました。

お店のオープン後は、和菓子の製造をメインで担当している入社3年目の先輩社員や、藤田さんに指導してもらいながら、一緒にあんこを炊いたり、練り切りの細工を行ったりなど「(株)常陸風月堂の和菓子」を覚えている最中です。

ー入社してみて気づいたことや印象が変わったことはありますか?

従業員同士の仲が本当に良いことに驚いています。実は、当店へは、元々お客さんとして通っていたんです。その時はいつも従業員の方が笑顔で声を掛けて下さるのが楽しみでした。今は、私が入社し従業員同士の関係になりましたが、変わらずみなさん気にかけてくださっています。

仕事の担当や雇用形態に関わらず、誰もが協力的な姿勢で支えあっていますし、些細な事もすぐに聞く事が可能な空気感なので、ストレスなく仕事を覚えることが出来ています。

社員になってから、私は厨房にいる事が多いので、お店のお客さまと言葉を交わす機会はほぼ無いのですが、接客を担当したパートの方が仕事中にお客さまから聞いた感想などを伝えてくれるので、それが励みにもなっているんです。

ー社内全体に「いい関係」が築かれているんですね

はい。本当にそう思います。代表の藤田さんと私たちとの関係も想像よりずっとフラットでした。

当社では、普段から全従業員と藤田さんが定期的に1on1で話をする機会があるんです。そこでは、今後の目標などの話もするのですが、ちょっとした世間話をすることも多くて。こうした普段からの関係があるからでしょうか、「上司だから」「社長だから」と仕事中萎縮して話しかけられないなんてこともありませんし、分からない事があれば声を掛けられています。普通なら「話すほどでも無いかもしれない」と思ってしまうような、小さな事でもいつでも相談出来ると思えるのは、働く上で大変心強くもあります。

ー今後挑戦してみたいことはありますか?

オリジナルの商品をつくることが夢です。製菓学校では洋菓子を専攻していたこともあり、和菓子も洋菓子も好きなので、私らしい視点での発想をいつか形にしたいと思っています。

今は和菓子の作り方や仕事の流れを覚えている段階ではありますが、もっとお店の力になれるように勉強し続けたいと思います。

働く時間を「豊かな人生」の糧にして欲しい

最後に「当社で働く経験を自分の『豊かな人生』のために使って欲しい」と藤田さんは語った。

「人間を磨くのが人生だと思っているんです。ここで誰かを笑顔にした経験は、少なからず自分自身の価値を高めることにつながるのではないでしょうか」

菓子には作るその人の人生が反映されるが、仕事をする時間もまた、豊かな人生を編むひとつの要素となるに違いない。

藤田さんやスタッフの皆さんのお話を聞いてみたいという方からの応募を心よりお待ちしております。

企業名 株式会社常陸風月堂
ホームページ https://www.fugetsudo.net
住所(勤務地) 茨城県日立市十王町山部1773-1
雇用形態 正社員
募集職種 和菓子製造、マネジメント
採用人数 1〜3名
給与 185,000円〜(能力、経験を考慮)
待遇
福利厚生
・通勤手当:月額2万円まで
・雇用保険
・労働災害保険
・健康保険
・厚生年金
・昇給(年1回、技術の習得、能力向上、協調性などを判断)
勤務時間 製造担当 7:00〜16:00
マネジメント 10:00〜19:00
休日 火曜日+1日
年間休日:104日
仕事内容 製造担当:お菓子の製造(主に手作りでの製造、商品開発)
マネジメント:商品管理、在庫管理、接客対応
必要な資格、経験、学歴 健康、協調性、能動的に動ける意欲があること。製造の方は30キロの砂糖袋を持ち上げることがたまにあります。
求める人物像 和菓子が好きな方、お菓子を作るのが好きな方、接客や管理するのが好きな方
募集期間 掲載開始から1年間
※募集人員が埋まり次第終了とさせていただきます。
選考プロセス まずは下記「応募ボタン」よりご応募ください。応募後、応募企業より直接ご連絡させていただきます。お問い合わせの場合も下記の応募ボタンよりお問い合わせください。お電話での直接のお問い合わせはお控え下さい。

    応募企業名 必須

    株式会社常陸風月堂

    お名前 必須

    ふりがな 必須

    メールアドレス 必須

    電話番号 必須

    お住まいの住所 必須

    性別

    年齢 必須

    希望する部門 必須

    製造担当マネジメント

    自己紹介

    応募理由等 必須

    Writer Profile

    蓮田 美純

    1990年茨城県生まれ山育ち。趣味は食べることと暮らすこと。パンと散歩が好き。

    Photo:佐野匠